2008年01月17日

アンティクカフェ「さくら木」

旧暦:12月10日
晴れ。薄く降り積もった雪が、朝まで溶けずに残っていた。高架を走る電車から見る船橋の家並みは、屋根が雪で覆われていた。仕事帰りに、佐倉市役所に寄った。佐倉の町も、日陰にはかなり雪が残っていた。

佐倉市役所には、佐倉市の地図を買い求めるために行った。ホームページで調べたところ、「まちづくり計画課」という部署で販売しているということが分かった。以下の四種類の地図を購入した。

白地図…佐倉市全域、1/20000、平成18年3月発行
白地図NO.1…佐倉・根郷・和田地区、1/10000、平成19年8月
白地図NO.2…臼井・志津・千代田地区、同上
白地図NO.3…弥富地区、同上

実は、市役所に行く前に、佐倉図書館に行こうと思っていた。京成佐倉駅を出て、図書館に向かって歩いて行く途中で空腹をおぼえ、図書館を通りすぎて少し行った所に、「川瀬屋」というお蕎麦屋さんがあることを思い出し、腹ごしらえをする方が先だと、雪が残ってすべりやすくなっている道を注意深く歩いて川瀬屋に向かったが、すでに昼の部は終わり準備中になっていた。

仕方なく引き返しながら、いったんは空腹を我慢して図書館をのぞいてみようと思ったが、一度目覚めた腹の虫はおとなしくしてくれるはずもなく、昼食を求めて歩き続けても、適当な店はまったくない。昨年市民大学のメンバーで佐倉市内を散策したときは、大勢だったので感じなかったが、今にも崩れ落ちてしまいそうな古びた家の前を通ったり、すでに屋根が崩れ落ちてしまったまま放置されている家を見ながら一人で歩いていると、ひもじい思いも手伝って、わびしさがひしひしと迫ってきた。

市立美術館の近くまでやってきたとき、アンティクカフェ「さくら木」という店があることに気づいた。営業中という表示板が出ていた。長い間歩き回って、体も冷えてしまっていた。今日はまだ一杯のコーヒーも口にしていなかった。せめて温かいコーヒーでも飲もうと思い、立ち寄ることにした。なんとなく店全体がホコリに包まれているような感じが気になったが、アンティクカフェだから仕方ないだろうと思い直して、ドアを押した。

先客は一人、30歳代の男が携帯電話の画面に見入っていた。四人掛けのテーブルが四卓、室内の中央あたりの木箱に、マンガ・雑誌類が積み重ねられている。壁にはとまった古時計が掛けられ、周囲の壁に沿ってしつらえてある棚に、ホコリをかぶった金属製の花瓶が並べられていた。

調理場の奥から出てきた店主は、古ぼけたアンティクカフェにふさわしいと言えばふさわしい、白髪のまじった長いヒゲをたくわえた年老いた男だった。年は70歳ぐらいにはなっているかもしれない。

席に着くと、水を満たしたグラスを手にして注文をとりにきたが、そのゆっくりと歩を進める様子は、悠揚迫らざると言えば聞こえはいいが、単に歳のせいで動作が緩慢になっていたのだろう。それでも、下はジーンズ、上はジャケットできめていた。グラスを持った左手の薬指には、指輪がはめられていた。

ヒゲの老店主は、注文したブレンドコーヒーと桃山・チョコレートがそれぞれ1つずつ入った小さな器をテーブルに置き、か細い声で、
「ごゆっくり、どうぞ」
と言って、調理場の奥に姿を消した。

店内に流れている音楽は、60年代のアメリカンポップスだった。冷えた手をコーヒーカップであたため、ニール・セダカの「ダイアリー」、ジーン・ピットニーの「ルイジアナ・ママ」、ジョニー・バーネットの「ユア・シックスティーン」、そしてザ・プラターズの「オンリーユー」などに耳をかたむけ、高校のころを思い出しながら飲むコーヒーは意外においしかった。

posted by 里実福太朗 at 00:00| 里ふくろうの日乗