大晦日の夕刻のスーパーは思いのほかすいていて、かえって普段の日曜日の方が混雑しているな〜などと思いながら、スーパに併設されているスターバックスの近くを通った時、ふとマカロンのことを思い出した。2・3日前ここにマカロンについて書いたこと、ヨーロッパ旅行から帰国後、スタバで偶然見つけて買い求めたことなどが、マカロンを思い出させたのだろう。
スタバなら、どの店でもマカロンを扱っているのだろうか、どうでもいいことかもしれないが、そんなことも確かめてみたくて店内に吸い込まれてしまった。店内は空席が多く、そして席を占めているのは、主として二十代の若い人たちだった。窓際の席では、参考書らしきものをひらいて勉強している若者がいた。少し離れた席では、年賀状を仕分けしている若者もいた。私でさえ年賀状はもう投函したというのに、大晦日のそれもたそがれ時にそんなことをしているのでは、元旦に届くことはないだろう。
マカロンは、注文カウンターの上、小さなカゴの中に十個程度おさまっていた。その中から四つほどを取り出して、
「このマカロンをください…持ち帰ります」
と若い店員さんに告げると、
「これ、マカロンというんですか」
「フランスのお菓子のようですよ」
ここでもまた最近得た知識が役立ったのだ。
「知りませんでした。ボクが知ってるのは、これくらいです」
と言いながら指し示したのは、バームクーヘンだった。それならこの私だって知っている。スタバの店員さんが、扱っている商品を知らないのでは、ちとまずかろうと思うけれども、そんなふうに正直に言ってしまうということは、たぶんアルバイトの人なんだろう。
「お好きなんですか」
と訊ねられ、グッと言葉に詰まってしまった。好きというほどではない。甘みが強く感じられ、小さなかけらを口に入れればそれで十分なのだ。とても好きだとは返事することはできない。
「家のものが好きなんです」
と、とっさに答えておいた。
なおこのマカロンの包装袋には、販売者はスターバックスと記されていたが、製造者は示されていなかった。

