2011年11月29日

ポン太はどこへ行った?

3週間ほど、ポン太に会えなかった。フランス語講座がある日にには、授業が終わってから、ポン太が暮らす公園に立ち寄ってはいたのだが、いつも縄張りにしていた場所には姿が見えなかった。ポン太どこへ行ってしまったのだろうか。

先日も授業が終わってから公園に立ち寄ってみたが、やはりポン太はいなかった。そのかわりポン太がいた辺りには、二匹のほかのネコが、夕日を浴びながらのんびりと過ごしていた。ポン太は縄張り争いに負けて、転居せざるを得ない仕儀となったのだろうか。

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晩秋ともなれば、陽が落ちるのは早い。ポン太に未練を残しながら、撮影を切り上げて遊歩道を伝って公園の出口に向かった。道筋のベンチには、あかね色がかすかに残る西の空に見入っている人が座っている。イヌと散歩をしている人がいる。紅葉の木の下に寄り添う二つの影がある。身が固まってしまったかのように、顔を伏せたまま座り続けている人いる。ホウキを手にして、落ち葉を掃き集めている人もいる。都会の公園という場所には、さまざまな人生が凝縮されている。

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50メートルほど歩いたとき、黒っぽい小動物の姿が目に入った。ひょっとして…と目を凝らすと、黒に混じって白っぽいものも見えた。その黒と白との模様からして、小動物は紛れもなくポン太だった。雨の降る寒い夜もあったはずだが、無事命をつないでくれていた。

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足早に歩いて行く後ろ姿に向かって、
「ポン太」
と声を掛けてみると、振り返ってこちらを見た。そして、きびすを返して、近づいて来るではないか。今までは、声を掛けても親愛の情を示してくれることなどなく、いつも知らんぷりしていたというのに、思いがけないことだった。おまけに「ミャーオ、ミャーオ」となきながら近づいて来るではないか。そして、さしだした手に体をすり付けてきた。

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ポン太は、再会を喜ぶそぶりを何回か繰り返し、再び後ろ姿を見せて、振り向きもせずその場を去って行った。何となく物足りなさを感じながら、その姿がビルの隙間に消えていくのを見送ったのだった。そのあっけない再会の場面は、まるであらかじめ準備されていたの儀式のようでもあった。

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2011年11月27日

日帰りの撮影ツアー

参加者は15人、そしてツアーコンダクターと写真家の先生、さらにドライバーを加えると、一行の人数は合計15人だった。バスは乗車定員40人以上の大型車で、一人が2座席を利用できるという快適さ、車内では、初心者向けの講習が1時間ほどあり、今回の内容は露出に関することだった。

塩山から望む富士山

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【恵林寺】

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安禅必ずしも山水を須いず
心頭を滅却すれば火も自ら涼し


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境内で紅葉を撮っているとき、同じく紅葉を撮っていたおばさんに、
「カメラマンさんですか?」
と尋ねられた。せっかくそう思ってくれたのだから、
「そうですよ」
と答えた方が礼儀にかなっているような気もしたが、正直に答えておいた。

群馬県からツアーで来たと言っていた。5時起きで、もう疲れたとも言っていた。

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【岩波農園】

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あんぽ柿は、一つ500円もする。高いなーと思っていたところ、皮むきをしていたおばさんが、
「東京で買えば、倍はするよ」
と言っていた。

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【甘草屋敷】

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甘草屋敷は、JR塩山駅のすぐ近くにある。

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2011年11月24日

塩山ころ柿の里

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撮影ツアー

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談合坂、10:30着
リニューアルオープン
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2011年11月22日

鶴岡八幡宮・大イチョウの今

鶴岡八幡宮の大いちょうが、強風にあおられて根本から倒れたのは、2010年3月10日未明のことだった。

【鶴岡八幡宮の大銀杏倒れる 回復も不可能に】
(ウィキニュース 2010年3月10日)


【鶴岡八幡宮のご神木 樹齢1000年「大銀杏」折れる】
(10/03/10)

(ANNnewsCH さんが 2010/03/09 にアップロード )

再生させることは不可能だともいわれた。しかし再起を願い、元の大石段側の場所に残された根を保全して、倒れた木は西側に移植した。それから約一年八ヶ月が経った。訪れた日に目にしたのは、残された根本と、移植された幹から何本も伸びている細い枝だった。

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倒れることがなければ、次のウェブページに載っている写真のように、今ごろは黄葉を全身にまとった偉容を見ることができたはずだ。

【フォトポタ日記】



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2011年11月21日

北鎌倉の食事処「笹の葉」

家を9時頃に出たというのに、北鎌倉に着いた時は、すでに12時近くになっていた。そこでまずは昼食、北鎌倉駅近くの「笹の葉」という自然食料理・精進料理の店に向かった。

「笹の葉」は、駅から歩いて5分とかからないところにある。駅を出て、すぐに右折する。交通量の多い狭い道路なので、車に注意して歩かなければならない。しばらく進み、豆腐屋さんのある角を右折する。少し奥まったところの右側に、「笹の葉」はある。営業中という看板がなければ、ちょっと古びた普通の家とみまちがえてしまいそうな店構えだ。

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12時前ではあったがすでに満席にちかく、入り口脇のテーブル席しか空いていなかった。しばらくそこで待っていると、運良く庭に面した二人用の席が空いて、そちらに移動した。

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私は「玄米菜食膳」、夫人は「小鉢膳」を頼んだ。ほどよい量で、完食した。店の人も親切で、気持ちよく食事することができた。(左が小鉢膳、右が玄米菜食膳)


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2011年11月20日

激動の三日間

木曜日から土曜日までの三日間、外出することが続いたせいか、今日は少し体が重かった。木曜日は鎌倉行、金曜日はフランス語講座、土曜日は、学生時代に入っていたサークルの創設50周年の会合、その後、写真塾の撮影会で上野公園に行き、最後はアメ横の飲み屋さんで「花流し」(これからは、お疲れさん会を「花流し」と呼ぶことにする)、こんな具合で、老骨にとってはなかなかのハードスケジュールだった。

OB会は、神楽坂の「PORTA」で行われた。参加者は、昭和30年代の古参のOBから現役の大学生まで、ざっと数えて50名は超えていた。同期の参加者は、私を含めて4人だった。最初のうちは、胸に付けた名札の名前を見ても、若かりし日の顔が思い出せなかったが、不思議なもので、話しているうちに二十歳前後の頃の顔がよみがえってきた。話し方やしぐさまでもが、歳を経ても変わらないのも面白い。

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OB会を途中で失礼して、降りしきる雨の中を上野公園へと向かった。目指すは動物園の正面入り口、定刻から参加した塾生たちは、動物園に入場して、雨に打たれながら動物たちを撮影することになっていたが、かなり遅れて参加する私は、その場所で合流することにしていた。

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2011年11月18日

都内と鎌倉の紅葉


温かい日が続いて、紅葉の見頃の訪れが遅れていたが、今週に入ってからは寒さが増して、木々が色づく気配が漂ってきた。新宿区内の大学の周辺でも紅葉した木々を見ることができる。日当たりの良い場所は色づきが早く、講堂前の大イチョウの木は見事に黄葉していた。

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上野公園の紅葉も、場所によってはきれいに色づいてはいるが、全体的にはまだまだ物足りない。

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昨日訪れた鎌倉の紅葉も、同様だった。実は、先週の木曜日に催行予定だった鎌倉・箱根を巡るツアーに申し込んでいたのだが、申し込み人数が少なくて中止になってしまった。もし実施されていたとしても、鎌倉は紅葉の見頃にはほど遠かったであろう。

ツアーは中止になったが、今週は少しは紅葉が進んでいるだろうと期待して、往復5時間もかけて、鎌倉まで行ってきたのだった。しかし残念ながら、まだ少し早かった。見頃を迎えるのは来週以降であろう。

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2011年11月14日

花流し

先週、近隣の神社を訪ねた際、境内の拝殿に張り紙があったことはすでに書いた。

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祭礼の日取りを記した部分の左側、桜色のグラデーションで彩られた用紙に、次のように記されていた。

花流し
 十一月十三日 十三時〜

大祭は、3年に一度催される。運営費用の問題で、毎年の実施は難しいと聞く。その3年に一度の大祭が、先週行われてしまったのだ。実は、3年前にも見逃してしまっていた。その時は、3年間待たなければならないとは先の長い話だ、と実に残念に思った。しかし、その3年はまたたく間に過ぎ去り、こうしてまた見逃してしまったというわけだ。

ところがその張り紙を見て、一縷の望みがわいた。祭礼は二週にわたって行われるのではないだろうか。華やかないろがみに書かれた「花流し」と言葉には、そう思わせるだけの艶やかさがあった。華やかな衣装をまとった踊り手が、境内狭しと踊りまわる様子まで浮かんでくるではないか。

いよいよその「花流し」の日がやってきた。自転車を駆って、くだんの神社へと向かった。境内には、人の姿がちらほらと見受けられた。いつもは閉ざされている拝殿の戸は、すべて開け放たれていた。何かが行われるのは、もはや確実だった。

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拝殿内では、何人かの人が忙しそうに立ち働き、整然と並べられた座卓の上に、器などを並べていた。それを見ると、次第に踊りの準備ではないような気になってきた。その時、年配の人が声を掛けてきた。
「祭礼は、先週終わりましたよ」
「残念ですが、見逃してしまったんですよ。でも、今週も祭礼の続きがあるようですね」
「………」
「今日、『花流し』があるんじゃないですか」
それを聞いて、その年配の人はこんなことを教えてくれた。
「『花流し』というのは、慰労会のことなんですよ」

華やかな祭りの後で、祭りに携わった人たちのための、疲れを流して心身を癒やすための集まりを「花流し」と呼び習わしているのだった。とんだ勘違いではあった。それにしても、わざわざ桜色のいろがみに書き記されているのでは、誤解してしまうのも仕方がない。

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2011年11月08日

神風が吹く

頭に思い描いていたのは、境内を埋め尽くすギンナンだった。、しかし、深閑とした神社の境内で目の当たりにしたのは、まばらに落ちているわずかな数のギンナンだった。

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境内が掃き清められていた理由はすぐ分かった。拝殿の壁に貼られた一枚の紙に、祭礼の日取りが記されていた。それが昨日だったのだ。鈴の緒が新しくなっているのも、祭礼のためだったのだろう。

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見事に当てが外れてしまい、わずかばかりのギンナンを拾い集めていた時、一陣の風が吹き抜け、それと同時に、天から、いや樹上から、パラパラと大粒のギンナンが落ちてきて、地面にたたきつけられた。
「神風だ」
と言いながら、地面に散らばるギンナンを拾い集めた。しばらくして、地面を打ち付ける重い音が、再び境内の静寂を破った。ギンナンは、わずかな風でも振り落とされてしまうほど熟していたのだろう。僥倖に恵まれ、ビニール袋に収まった黄金色の実を携えて、私たちは神社をあとにしたのだった。

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2011年11月07日

城址公園で紅葉狩


今年は暖秋で、各地で紅葉が遅れていると聞く。ここ佐倉でも同様だが、午後からは天気が回復するという天気予報を信じて、夫人の従姉妹を案内して城址公園に出かけてみた。月曜日は、国立民族博物館の休館日、駐車場が使えるかどうか市役所に問い合わせたところ、利用できるとということだった。

市の公式ページによれば、樹齢70年のイチョウの木が、城址公園には25本あるということだ。また、自由広場の駐車場近くに、イチョウの木が集中しているらしい。あらかじめこんな情報を仕入れて、城址公園に向かったのだった。あわよくば、ギンナン拾いもできるかもしれないという期待感も抱いていたことは、ことわるまでもない。

イチョウの木は、一部分まだ緑の葉を残していたが、ほぼ黄葉で包まれていた。その下に近づくと例の異臭が漂ってきた。すでにギンナン拾いをしている人の姿も見受けられた。透明の使い捨てビニール手袋をはめていたおばさんは、紅葉狩に来た人たちと誰彼の区別なく、ギンナン談義を繰り広げていた。

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このところ強風の吹く日がなかったからか、落ちているギンナンは、すでに腐敗しているものが多く、収穫はあまりなかった。そこでのギンナン拾いは諦めて、公園内を散策してから、あの神社へと車を進めたのだった。

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2011年11月05日

ゴーヤーとの別れ

ゴーヤーの苗を植えたのは、5月17日のことだった。ゴーヤーを栽培するのは初めてだったのに、ありがたいことにたくさんの実が生って、ゴーヤーチャンプルーを何回も食することができた。いよいよ今日、ツルが複雑に絡みついていたゴーヤーネットを取り外した。根もとの方は、2pほどの太さになっていた。

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来年も同じような成果を期待したいところだが、ゴーヤーは連作障害が発生するらしい。そこで、ネットでちょっと調べてみた。八尾市の公式サイトに、「みどりのカーテンの取り組み」というページがあり、そこに、「みどりのカーテン」ガイドブックというPDFファイルが載っている。P9に、「ゴーヤ栽培:2年目以降もやってみよう! (ファイル名:P9.pdf サイズ:955.59 KB)」にという項目があり、そこに連作傷害そしてその対策が詳しく載っていた。

【ゴーヤ栽培:2年目以降もやってみよう!】
http://www.city.yao.osaka.jp/cmsfiles/contents/0000006/6923/P9.pdf

そのガイドブックには、対策として土壌改良の方法が載っているが、一番簡単な方法は、植える場所を変えることのようだ。今年はネットの張り方があまり良くなかった。来年はネットを張る位置を変えようと思っているので、自ずと苗を植える場所も変わってくる。従って、土壌改良の手間を省くことができる。そんなことをも目論でいるのだが、さて成果は如何に…
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2011年11月04日

プラネタリウム「宇宙創生」観覧


プラネタリウム「宇宙創生」
場所:葛飾区郷土と天文の博物館
上映期間:2011年10月1日〜12月25日
博物館入館料:100円(大人)
プラネタリウム観覧料:350円(大人)
アクセス:京成本線「お花茶屋駅」から徒歩約10分

平日は、16時から一回のみの上映。
上映時間は約1時間。
開場は上映開始時間の10分前。
平日の今日の観覧者数は、かなりすいていて20人弱。

都心に行くときは、いつも京成電車を利用しているが、お花茶屋駅で降りるのは初めてのことだった。南北に細長くのびる曳舟川親水公園を、北に向かって10分ほど歩くと、ほどなく「葛飾区郷土と天文の博物館」に到着する。

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2011年11月03日

自由ネコ「ポン太」の日常(3)…カニカマが食べたい2


自転車男が、コンビニでカニカマを買ってくると言い残し、自転車にまたがって公園の外へと走り去ってから、もうかれこれ20分近く経つ。だいたい、カニカマというものは、コンビニで売っているのだろうか。そんなことを思っていると、カニカマへの期待感は急速にしぼんできた。

陽はすでに西に傾き初めていた。カメラ男の様子をうかがうと、西日に照らされながら、空をぼんやりと眺めていた。眠気がさしてきて、アクビがやけに出る。まぶたが重くなるのと同時に、頭も重くなって、いつの間にか眠りの世界に引きずり込まれていた。

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その心地良い眠りを破ったのは、カメラ男の声だった。
「来た! ポン太、帰って来たよ!」
その声に慌てて身を起こし、カメラ男が視線を送る方を見ると、確かにあの自転車男が、お尻をサドルから浮かせて、前傾姿勢を取りながらこちらに向かって来るのが見えた。

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「わるいわるい、待たせちゃったね」
自転車男は、息を弾ませながら待たせたことを詫びた。オレは心の中で、500円玉を持ち逃げしたに違いないと疑ったことを詫びた。
「ずいぶん時間がかかりましたね」
「最初コンビニに行ったんだよ。そしたら、カニカマがなくてね。仕方がないから、スーパーに行ってみたんだよ。隣の駅の近くに、魚専門のスーパーがあるだろ、そこだよ」
「それで、あったんですか」
「あった、あった。ホレ」
と言って、レジ袋を差し出した。
「いくらだったんですか」
「一パック130円。二つ買ってきた」
レジ袋から取り出されたカニカマのオレンジ色の背は、つややかに輝いていた。
「つい最近、家の近くのスーパーでカニカマを買ったことがあるんですが、たしか特売品で78円だったかな。ネコにあげるなんて、もったいないような高級品ですね」

ネコにあげるのはもったいないだって…たくさん写真を撮らせてあげたんだから、お礼としてちょっとは高級なものを食べさせてくれたってバチは当たらないよ。早くちょうだいと、一声「ニャーォ」と鳴いてせかしてみた。

自転車男は、一本のカニカマをオレ様の鼻先に置いた。すぐに食いつきたいところだが、軽いネコにみられたくないから、クンクンと臭いをかぐフリをしてから、おもむろに食らいついたのだった。

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posted by 里実福太朗 at 23:55| ねこ

里からの便り−滝かつとし展


里からの便り−滝かつとし展
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期間:2011年11月2日(水)〜11月10日(木)
場所:神楽坂アートガレー
開廊時間:AM11:〜PM6:00
休廊日:11月7日(月)
最終日:PM5:00まで

滝かつとしさんのアトリエは、茨城県大子町にある。その地の観光名所である袋田の滝の紅葉は、今年は少し遅れているそうだ。

なお、11月17日からは、調布市仙川町の「ギャラリー蔵」で開催される。
詳しくは、こちら
http://art-galley.craps.co.jp/exhibition_20111102.html

posted by 里実福太朗 at 22:33| 里ふくろうの日乗

新歌舞伎座の今


新しい歌舞伎座は、昨年(平成22年)10月新築工事を着工した(竣工予定は平成25年春)。現在は、鉄骨の構造物が立ち上がり始めている。

南側から
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西側から
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posted by 里実福太朗 at 22:13| 里ふくろうの日乗

2011年11月01日

自由ネコ「ポン太」の日常(2)…カニカマが食べたい


その男が現れたのは、たしか9月下旬のこと、まだ暑い日が続いていて、いい加減うんざりしていた頃だった。何が入っているのか分からないけれど、パンパンにふくらんだデイパックを背負い、肩から小さめのショルダーバッグを斜め掛けにしていた。少し猫背で、背の丈は180センチは超えていそうだ。年の頃は60歳前後だろうか、見ようによってはもっと若く見える。

オレ様に、カメラを無遠慮に向ける輩は数多くいる。オレの邪魔さえしなければ、撮りたいヤツには勝手に撮らせておくのがオレ様の流儀だ。だからその男が、ショルダーバッグからカメラを取り出したのが目に入っても、別に気にならなかった。

最初は遠くの方からカメラを構えていた。そして腰を低く落として、、少しずつ少しずつにじり寄ってきた。そうなってくると、ちょっとは気になってきたが、それでも我慢していた。男はオレが逃げないのをいいことに、鼻先にレンズを近づけて撮り始めた。いくらオレ様がアップにたえる顔だとしても、限度があるというものだ。とうとう嫌気がさして、体の向きを変えて、お尻を向けてやった。

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ところが、その男はオレの正面に回り込んでまたアップで撮り始めた。こういう手合いには、一発うなり声を上げて、オレの自慢の牙を見せて脅すか、あるいは、人間が来られない所に移動するか、そのどちらかで対処する必要がある。オレは、とりあえず今回は後者を選んだのだった。

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その男は、未練たらたらの体で、オレの方をずっと目で追っていた。ヤレヤレこれで安穏な時間を取り戻せた、そう思い始めたときだった。以前見たことのある顔が、あの男に話しかけているのが見えた。その男は、以前はこのあたりでよく見掛けたが、近ごろはさっぱり姿を見せなくなっていた。久しぶりでみたその男は、どこで調達したのだろうか、立派な自転車にまたがっていた。耳を澄ますと、こんなやり取りが聞こえてきた。

「やあ、逃げられてしまいましたね。あいつは、ポン太って言うんですよ。昔はこわがりでね、すぐ逃げたもんだ」
「そうですか、今は、すぐ逃げなかったですよ」
「エサをやって、手なずけたんだよ」
カメラ男は顔をしかめて何か言いたげだったが、ぐっとこらえてその言葉を腹の中にしまったようだった。
「エサって、煮干しのようなものですか」
「そんなもんじゃ、だめだよ。ここらのネコは、いいもん食ってるんだよ。煮干しなんかじゃ、見向きもしないよ」
自転車男は、我々の食生活について、ある程度の知識は持っているようだった。
「キャットフードみたいなものですか」
「それでもいいよ。それと、あいつはカニカマが好きなんだ」
「カニカマですか」
オレの耳がピクンと動き、よだれが流れ落ちそうになった。大好物の「カニカマ」、そういえば近ごろありついていない。
「金があれば、買ってきてあげるんだけど、仕事がなくてな、金がないんだ。今日だって、この公園で炊き出しがあると聞いたから来たんだけど、もうなくなってたんだよ。あんた、金ある? あるなら、それで買ってきてあげるけど」

金がないと聞いてがっかりしたけれど、カメラ男の方は、あんな立派なカメラを持っているんだから、カニカマを買うくらいのお金は持っているに違いない。カメラ男が、財布の中身を見られないように、バッグの中に手を入れて、もぞもぞと動かしているのを、期待をもって見つめていた。
「100円あれば、買えるよ」
「100円玉がないなァ…500円玉ならあるんだけれど」
「それでいいいよ、お釣り持ってくるからサ、500円で」
カメラ男は、自転車男の顔をじっと見つめていた。そして、500円玉を取り出して、自転車男の手のひらに載せた。
「よし、近くのコンビニに行ってくるよ。ここで待ってろよ、必ず帰ってくるからな」
と言うなり、自転車に飛び乗って、風のようにどこかに去って行った。

オレは、ちょっと心配だな。あの自転車男は、炊き出しに食いっぱぐれたんだろ、それに500円と言えば、大金だ。考えたくはないけれど、持ち逃げしてしまうことだってあり得ないことではない。公園でいろんな人間模様を見ているオレ様の想像では、その確率の方が高いな。でも、カニカマは食べたい。だから今だけは、オレの人間を見る目が狂っていることを願うよ。

自転車男が消えてから、もう10分以上は経っているに違いない。頭の中のカニカマに、霧がかかってだんだん見えなくなってきた。カメラ男も、自転車男が消えた方向をじっと見つめ続けている。そして、ときどき腕組みをして深いため息をついた。もうカニカマは、諦めた方がいいのかもしれない。
posted by 里実福太朗 at 23:50| ねこ