2012年02月07日

自由ネコたちの縄張り争い(2)

「何日か前に、ネコのケンカがあったらしいよ」
そう教えてくれたのは、その公園でよく見かけるおじさんだった。たまたまなのかもしれないが、見かける時はいつも竹ぼうきで掃き掃除をしていた。

何度かそのおじさんの姿を目にすることを繰り返すうちに、和服姿に下駄履き姿ではないが、赤塚不二夫の漫画「天才バカボン」に登場する「レレレのおじさん」を思い出すようになっていた。和服姿ではないし、下駄はサンダルになっているし、共通する点はいつも竹ぼうきで掃除をしているところだけであるが、見かけるたびに「レレレのおじさん」を思い出してしまう。

そのホウキおじさんの言によれば、縄張り争いの大げんかをしたのは、ポン太とパンダだったということだ。ただ、ホウキおじさん自身が目撃したのではなく、おじさんも誰かから聞いた話らしい。残念ながら、その伝聞ルートはまだ明らかになっていない。

ホウキおじさんがいつも掃き掃除をしている場所は、ポン太の縄張りの南側で、その辺り一帯を支配していたのはパンダだった。だからポン太は、今まではそこに足を踏み入れることはなかった。

縄張り争いの詳細は明らかになってはいないが、争いの結果は明らかになっている。ポン太が勝利をおさめ、パンダの縄張りを手中にした。ともかく相当に激しい争いだったようだ。ポン太のあの鼻の傷は、その時に受けたのものと思われる。ポン太はこの勝利で、池の東側一帯のすべてが自分の縄張りとした。同時に、その辺りで暮らしていた雌ネコたちも、ポン太の支配下に入った。負けたパンダは、ホウキおじさんによれば、あわれにも池の西側に逃げ去ったそうだ。

その争いから二・三日後、パンダは、かつて自分の縄張りだった地域の少し外側に姿を現した。大きな岩の頂に陣取り、心なしか不安げな表情で、失った縄張りの方を眺めていた。その視線の先には、ホウキおじさんと「エサやりおじさん」の姿が見えた。

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この「エサやりおじさん」は、ご本人の言によれば、毎日二度、午前中と午後にエサをやりに来ているそうだ。夏、帽子をかぶっていない時は、長く伸ばした髪の毛を、頭の後ろ側で一つに結び、つまりポニーテール状にしているのが見えた。しかし冬の今は、毛糸の帽子を深くかぶっていて、そのポニーテールは見えなくなっている。

ポン太が今まで縄張りとしていた場所には、「エサやりおばさん」が週に三回やってきて、ポン太やモミジ・ミコなどにエサをやっていた。週に三回と、毎日、それも午前と午後の二回とでは、どちらが優雅な生活を送れるかは言うまでもないことだ。そういう待遇の違いが、今回の縄張り争いの原因だったのかもしれない。

岩の上から注意深く眺め渡していたパンダは、やがて意を決して、周囲に目を配りながらそろりそろりと、ホウキおじさんとエサやりおじさんのもとへと近づいていった。折しも午後のエサやり時間で、紙製のお皿には、盛りつけられたばかりのキャットフードが山を成していた。

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ポン太の姿がないことを確かめたパンダは、ホウキおじさんの足もとに近づき、何回も何回も体をなすりつけた。
「おう、パンダか、久しぶりだな。元気にしてたか?」
ひとしきり親愛の情を示したパンダは、エサを一心不乱に食べ始めた。西の方に追い遣られてからというもの、十分なエサにありつけなかったのかもしれなかった。

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posted by 里実福太朗 at 23:50| ねこ